火山が連なる火山帯の上に重なるように位置する日本列島の歴史には、火山噴火やその被害が数多く記されています。
現在でも活動している火山は多く、鹿児島県にある桜島は毎日のように小さな噴火を繰り返していますし、2014年には60人以上の方が命を落とされた御嶽山の噴火は記憶に新しいでしょう。
火山の多い日本で今注目されているのが、九州の熊本県にある阿蘇山です。
阿蘇山は熊本地震の本震が発生した4月16日に小規模な噴火をしたため、熊本地震との関連や噴火の可能性が心配されています。
そこで今回は阿蘇山について、大噴火の歴史と今後の可能性、大噴火の被害や前兆についてまとめてみました。
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阿蘇山の概要
阿蘇山と言えば、九州の中央に位置する熊本県阿蘇地方にある活火山。
数個の中央火口丘と雄大な外輪山から成り、世界最大級の広大なカルデラは阿蘇山に起こった巨大噴火の歴史を物語っています。
2007年には「日本の地質百選」に、2009年には自然豊かな公園に与えられる「日本ジオパーク」に認定されました。
現在も火山活動は続いていて、噴火警戒レベル2(火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生、または発生する予想)火口周辺への立入規制が継続されています。(5月9日現在)
阿蘇山大噴火の歴史
阿蘇山の歴史を振り返ると、カルデラ噴火と呼ばれる大噴火が過去4回起きたとされています。
カルデラ噴火とは、地下に溜まったマグマが一気に噴出する大噴火のことで、大きな破壊力を持ち広い範囲に甚大な被害をもたらします。
阿蘇山の歴史上で起きた大噴火は次の4回です。
・Aso1:約26.6万年前
・Aso2;約14.1万年前
・Aso3:約13万年前
・Aso4:約9万年前
過去4回の大噴火の中でも4回目の大噴火は最も大きくマグマの噴出量も多く、火砕流は山口県まで、火山灰は北海道まで、広い範囲に被害が達したとされています。・Aso2;約14.1万年前
・Aso3:約13万年前
・Aso4:約9万年前
九州をこえて本州にまで被害がおよぶなんて、想像しただけで恐ろしいですね・・・
その後カルデラ噴火と呼ばれるような大噴火こそありませんが、気象庁が発表している阿蘇山の火山活動の歴史を見ると、西暦550年頃から現在に至るまで150回以上の噴火を繰り返している活動が活発な火山であることが分かります。
歴史を振り返って考える、阿蘇山大噴火の可能性は?
9万年前の大噴火を最後に、巨大噴火は発生していない阿蘇山ですが、日本全体の歴史で考えてみると巨大噴火は1万年に1度の割合で発生しています。
日本で巨大噴火が発生したのは、今から約7300年前の鬼界カルデラが生まれた噴火が最後です。
これらの歴史から、1万年までにはまだ3000年近くあるので噴火の可能性は低いと考えて、3000年の時間は「巨大噴火の可能性はない!」と確約してくれるでしょうか?
ある日本の大学の研究チームは、今後100年の間にカルデラを形成するような巨大噴火が日本列島で発生する可能性は約1%であるという試算結果を発表しました。
巨大噴火の可能性1%を多いと感じるか、少ないと感じるかは個々によると思いますが、重要なのは可能性がゼロではないという点でしょう。
可能性がゼロでないのならば、大噴火はいつ発生しても不思議ではないのです。
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阿蘇山大噴火の被害とその前兆
1979年(昭和54年)に発生した阿蘇山の噴火では、死者3名・重軽傷者11名が発生しました。
その後現在まで噴火による死者こそありませんが、家屋の被害・農作物の被害・交通機関の被害・火山灰による健康被害など、噴火による被害は決して少なくありません。
しかしこれはあくまで「噴火の被害」であってカルデラ噴火のような「大噴火の被害」ではありません。

カルデラ噴火のような大噴火で発生する火砕流は、ダム等の障壁で食い止めることは不可能だと言われています。
カルデラ噴火で発生する大量の火砕流は100メートルほどの障壁なら楽々と乗り越えてしまうだろうと考えられているからです。
巨大噴火は地形を変え、種を滅ぼし、自然体系を一瞬にして変えてしまうほど、大きな被害をもたらします。
巨大噴火の被害から逃れる唯一の方法は、その場所から事前に退去することです。
では事前に退去するために必要な事はなんでしょうか?
それは噴火の前兆を見逃さないことだと思います。
地震研究が進んだ現在でも地震予知は難しいとされていますが、火山噴火についても同様に予知は難しいのでしょうか?
前兆から噴火は予知できる?
火山の噴火は地震と違いいくつかの前兆現象があるため、予知できる可能性が高いとされています。
前兆現象のひとつは、火山性地震や低周波の火山性微動の発生です。
多くの火山では、噴火の数ヶ月前から数時間前に震源の浅い火山性地震が観測されています。
火山性地震の発生回数は噴火が近づくにつれ増加するため、火山性地震の発生回数の増加は噴火発生の前兆とされています。
その他、火口付近の急激な隆起や、急激な地下の電気抵抗の減少・地磁気の変化・地下水の温度上昇なども、噴火の前兆と考えられています。
ただし、上記に挙げたような前兆現象が発生したからといって、火山噴火の可能性が100%だとは言い切れません。
前兆はひとつの可能性で、噴火の予知はまだまだ研究段階なのです。
2000年に噴火した北海道の有珠山のように、噴火予告の143時間後に噴火した予知の成功例もあれば、噴火の前兆と思われる火山性活動が観測されたにも拘わらず、実際には噴火をしなかった例もあります。
火山にはそれぞれ噴火の特徴があり、観測の歴史が長いほど、収集されたデータが多いほど、前兆が発見し易く噴火の予知が可能になると考えられています。
前兆現象を的確に捉えるためにはもう少し時間が必要なのかもしれません。
熊本地震の影響や関連性は?
熊本地震の本震が発生した4月16日以降、阿蘇山では小規模な噴火が発生しました。
阿蘇山などの火山活動はプレートの動きと深い関係があり、プレート同士が擦れ合うことで発生する地震をプレート境界型または海溝型と言います。
東日本大震災などがプレート境界型の代表的な例です。
一方、先日熊本で発生した熊本地震は、内陸直下型と呼ばれ活断層が動くことで発生します。
つまり阿蘇山の火山活動と熊本地震発生のメカニズムは異なります。
しかし、たとえ発生のメカニズムが異なったとしても、このふたつの事象が全く無関連であるとは言い切れません。
熊本地震が起こった背景には、プレートの圧力が働いた可能性があるという専門家の意見もあります。
プレートの動きで生じる圧力の影響を受けた九州の活断層が熊本地震を生んだとしたなら、プレートの動きは同時に阿蘇山に何らかの影響を与えた可能性を否定はできません。
9万年前の大噴火を最後に、小規模な噴火を繰り返している阿蘇山。
長い歴史の中、幾度も被害を被りながらも熊本の人達はその度再生してきました。
大噴火の可能性がゼロと言い切れない今、被害を最小限に食い止めるために、噴火の前兆を見逃さないよう注意深い観察が必要とされています。
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