PTSDの画像
自分や目の前の人の命に関わる大きな事故や災害のあとには、心に負った傷の影響で身体にさまざまな症状が起こるPTSD(心的外傷ストレス障害)になることがあります。

心に残る大きな傷を癒やすには、どんな接し方が大切なのでしょうか?

そこで、この記事ではPTSDの症状と診断テストや基準を詳しく知り、子供への接し方を考えてみましょう。



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PTSD(心的外傷ストレス障害)の背景


トラウマとそれによるPTSD(心的外傷ストレス障害)は、アメリカのベトナム戦争帰還兵の社会問題がきっかけで生まれた病気です。

それまでの戦争では、職業軍人ではなく徴兵制で集められた一般の兵士達は、みな上官の「撃て!」の一言で、敵の目視もせず,構えた銃を敵方向に闇雲に撃ち込んでいました。

これは効率としては大変無駄な戦い方です。

ベトナム戦争ではゲリラ戦を念頭にいれ、一般兵士も相手をはっきりと目視して発砲する訓練を受けたそうです。

肝心な戦争は撤退を余儀なくされましたが、これにより、戦いの効率はあがり、無駄な時間と銃弾、そして敵の数を確実に減らしました。

しかし、ベトナム戦争は、それまでの戦争よりも格段に精神を病む帰還兵を増やしてしまったのです。

人は人の命を壊せるようにはできていない。

個人を意識することなく、ただ敵という大きな目標に銃を向けた場合とは違い、相手を意識して、確実に倒すために引き金を引いたという事実は人の心を大きく傷つける行為でした。

精神医学界では、社会問題にまでに発展したベトナム帰還兵の研究を進め、その結果、自分と他人の命の危険に関わる事象は、心に大きな傷(トラウマ)を残し、その傷は脳に影響を与えてさまざまな身体症状を起こすという事が分かりました。


PTSDを引き起こすトラウマは、自分や他人の死や大きな怪我など身体の存在にかかわる危険なできごとを経験したり、目撃したことによる心の傷です。

事故・自然災害・虐待・DV ・いじめなどにより引きおこされ診断されることがあります。

同じ体験をしても、トラウマを負う人も負わない人もあり、トラウマを抱えてもPTSDの症状を伴う人も伴わない人もいます。


PTSDの症状


PTSDの症状の多くは,トラウマとなるできごとが起きた直後から半年までの間に始まりますが、数年の間隔を置いて突然現れることもあります。

現れた症状が1ヶ月以上の長期間続くのもその基準の1つです。

基準となる他の症状にも注目し、接し方の目安にしましょう。

フラッシュバックや追体験

・トラウマとなったできごとが、なにかのきっかけで突然蘇り、その時の痛み・感情などを再体験する。またそのために、気分がわるくなったり、呼吸困難・吐き気・冷や汗・動悸などの身体症状を引き起こすこともある。

・子供の場合は、トラウマとなったできごとやそれに関連することを遊びの中で繰り返し再現したりすることもある。

・トラウマとなったできごとを頻繁に夢に見る。

回避と麻痺

・トラウマとなったできごとを思い出させるようなもの・場所・人などを避けるようになる。

・思い出しても苦しまないように、感情を麻痺させる。

過覚醒

・トラウマになったできごとを思い出していないときにも、常に緊張状態が持続する。

・入眠困難や途中覚醒などの不眠症。

その他の症状

・パニック障害、うつ等の精神疾患、アルコール依存、薬物依存などの依存症。

・フラッシュバック時に関係なく、頭痛や腹痛などの身体的症状が現れることもある。


PTSD診断テストと基準


ネット上には検索すれば、PTSDの自己診断ができるテストがいくつかあります。

自分がPTSDかどうか、気になる場合はこのネット上のPTSD診断テストを試してみるのもいいでしょう。

しかし、ネット上の診断テストで正しい診断ができるわけではなく、テストはあくまでも目安に過ぎませんから、自己診断テストで高得点をマークするようなら、少しでも早く医療機関を訪ね、より専門的で正確な基準で診断してもらいましょう。

PTSDは心的外傷によって、身体、主に脳に実際に損傷を与えています。

長年の研究により,脳内の海馬の萎縮が見られることが発見されています。

そして、早く治療にかかると周囲の適切な接し方で症状の悪化を防ぐことができ、その分回復が早いことが分かっています。

下はネットでの診断テストの一例です。

PTSD診断テスト – Yahoo!ヘルスケア



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医療機関での診断基準

また、実際に医療機関で使われる診断の基準はこのようなものをテストして行われます。


PTSDの診断基準 (DSM-㈿)

A. 患者は、以下の2つが共に認められる外傷的な出来事の経験がある。

(1) 実際にまたは危うく死ぬまたは重傷を負うような出来事を、1度または数度、または自分または他人の身体の保全に迫る危険を、患者が体験し、目撃し、または直面した。

(2) 患者の反応は強い恐怖、無力感または戦慄に関するものである。

注 子どもの場合はむしろ、まとまりのないまたは興奮した行動によって表現されることがある。

B. トラウマが、以下の一つ以上の形で再体験され続けている。

(1) 出来事の反復的で侵入的で苦痛な想起で、それは心像、思考、または知覚を含む。

注 小さい子どもの場合、トラウマの主題または側面を表現する遊びを繰り返すことがある。

(2) 出来事についての反復的で苦痛な夢。

注 子どもの場合は、はっきりとした内容のない恐ろしい夢であることがある。

(3) トラウマとなった出来事が再び起こっているかのように行動したり、感じたりする(その体験を再体験する感覚、錯覚、幻覚、解離性フラッシュバックのエピソードを含む、また、覚醒時または中毒時に起こるものを含む)。

注 小さい子どもの場合、トラウマに特異的な再演が行われることがある。

(4) トラウマとなった出来事の一つの側面を象徴し、または類似している内的または外的きっかけに曝露された場合に生じる、強い心理的苦痛。

(5) トラウマとなった出来事の一つの側面を象徴し、または類似している内的または外的きっかけに曝露された場合の生理学的反応性。

C. 以下の3つ(またはそれ以上)によって示される、(トラウマ以前には存在していなかった)トラウマと関連した刺激の持続的回避と、全般的反応性の麻痺。

(1) トラウマと関連した思考、感情、会話を回避しようとする努力。

(2) トラウマを想起させる活動、場所、人物を避けようとする努力。

(3) トラウマの重要な側面の想起不能。

(4) 重要な活動への関心または参加の著しい減退。

(5) 他の人から孤立している、または疎遠になっているという感覚。

(6) 感情の範囲の縮小(例: 愛の感情を持つことができない)。

(7) 未来が短縮した感覚(例: 仕事、結婚、子ども、正常な一生を期待しない)。

D. (トラウマ以前には存在していなかった)持続的な覚醒亢進状態で、以下の2つ以上によって示される。

(1) 入眠または睡眠維持の困難。

(2) 易刺激性または怒りの爆発

(3) 集中困難

(4) 過度の警戒心

(5) 過剰な驚愕反応

E. 上のB,C,Dが1ヶ月以上持続する。

F. 臨床的に著しい苦痛または、社会的・職業的・その他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。


PTSDの子供への接し方


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大人はPTSDを抱えたとき、周りの人に相談したり医療機関を訪ねてストレスを軽減するなど、自分で問題解決の道筋にたどり着く術がありますが、子供の場合は自力でその道を探ることはできません。

子供には周りの大人のサポートと適切な接し方が不可欠です。


小さい子供の場合の症状と接し方

・なるべく大人が側についていて、守られているという安心感を与えましょう。

・災害時のトラウマが原因の場合、現実との区別がつかない場合があるので、子供にはテレビなどの再現シーンは極力見せないようにしましょう。

・言葉が出にくくなっている場合は、子供の伝えたいことを気持ちを汲んで、声に出して代弁してあげましょう。

・子供が眠れないときは添い寝をしましょう。

・なるべく平穏な日常を過ごし、問題が過ぎ去ったことや災害から再建し立ち直って行く経過などを伝えましょう。

少し大きな子供の場合の症状と接し方

・子供がトラウマについて話したがるときには、内容をよく聞いて何を伝えたいのか理解してあげましょう。

・感情が不安定なときには、それが自然なことだということを伝えましょう。

・身体的な症状が現れているときには、身体も戦っているのだという事を説明しましょう。

 身体を休め薬などで症状が治まるようしてあげましょう。

・同じ経験をして助からなかった犠牲者やその家族などのことを気にするようなら、その犠牲者や家族のためにできることを一緒に考えてみましょう。

・子供ながらに大人に気を遣い、感情を抑えて、自分の不調を周囲に知らせないことがあります。

・大人の方から様子をうかがって声をかけてあげましょう。

・周囲も余裕がない場合は、意識して落ち着いて、子供が安心して不調が伝えられるような状態を取り戻しましょう。

まとめ


PTSD(心的外傷ストレス障害)は、目に見えない心の傷が実態のある身体を蝕む障害です。

命や身体の存続に関わる記憶は、心の弱さには関係なく脳の海馬を収縮させ、ノルアドレナリンやセロトニン、コルチゾールなどの脳内の神経伝達物質の分泌に影響します。

そのために、さまざまな症状が現れます。

大人にとっても問題の大きな疾病ですが、自分で上手に対処できない子供にとっては長く続くほどに影を落とす病気です。

現れる諸症状に、その都度接し方をよく考えて、周りの大人が子供達のよりよい成長を手助けしてあげましょう。



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